口臭の原因は虫歯や歯周病以外にもたくさんあることはご存知ですか?
本記事では、口臭が気になっているけど歯科医院で行うべきか悩んでいる方に向けて口臭の原因や歯科医院で行っている口臭の治療法などを分かりやすく解説しています。
この口臭に関する記事を執筆している私は、歯科医師として20年以上臨床に携わり、医学部附属病院の口腔外科に研修医として入局して以来、口腔外科を専門に診療しています。現在は、市中病院の口腔外科部長として、親知らずの抜歯をはじめとして、一般の歯科医院では対応できない基礎疾患のある方の治療や腫瘍性疾患、外傷、唾液腺疾患、神経疾患、精神的疾患などの診療をしておりますので、口臭に関する情報の正確性は担保できていると思います。
口臭を感じたらまずは歯科を受診しよう
口臭の原因のほとんどが歯科で治療可能です。
厚生労働省の調査研究によりますと、口臭の原因の80%以上がお口の中にあります。
つまり歯科の領域です。
そして、その中でも歯周病が多くを占めています。
しかも糖尿病や腎臓病など内科的な病気で生じる口臭は、お口からの口臭ほど強くはありません。
言い方をかえれば、口臭の原因と症状のほとんどは歯科疾患からのものということですから、歯科で治療を受けると改善できます。
もし口臭がしているなと感じたら、まずは歯科で治療を受けてみてはいかがでしょうか。
口臭の成分
臭いとは、空気中を漂い化学物質が、嗅覚を刺激したことによって感じるものです。
口臭も同じで、口の中の化学物質に由来しています。
そこで口臭の原因となっている物質を調べてみると、その90%以上がお口の中の空気に含まれている硫化水素とメチルメルカプタンという揮発性硫黄化合物という化学物質でした。
もちろんこれだけではなく、そのほかにも、ジメチルサルファイドという硫黄化合物なども含まれています。
硫化水素は、卵が腐ったような臭いを生じます。
メチルメルカプタンは、生魚のような臭いです。
ジメチルサルファイドは、生ゴミのような臭いです。
このように原因となる化学物質によって生じる臭いも異なってきます。
これら硫黄化合物は、お口の中にいる細菌、中でも嫌気性菌とよばれる酸素が豊富な環境を嫌うタイプの細菌がお口の中の汚れや唾液、血液などに含まれるアミノ酸を分解することで作り出されています。
口臭を引き起こすお口の病気って何?
前述したお口の中の嫌気性菌は、歯周病で腫れた歯ぐき、口内炎を起こして傷んだ粘膜、口腔がん、舌の表面についている舌苔の中などに潜んでいます。
したがって、口臭を引き起こすお口の病気は歯周病・口内炎・壊死性軟組織・口腔がんなどであることがわかります。
これらお口の病気の中でも、歯周病の占める割合が特に高いです。
歯周病が原因の口臭では、メチルメルカプタンの占める割合が高くなる傾向が見られますので、口臭の成分を分析することで、歯周病が原因の口臭かどうかが分かります。
なお、口腔がんの場合は、独特のニオイを生じます。
歯科ではどんな口臭治療があるの?
口臭の原因を調べる
口臭を訴えて患者さんが歯科医院に来院した場合、まず最も多い原因である歯周病になっているかどうかを調べます。
歯周病かどうかを調べるために歯科では、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットの深さや、歯を支えている歯槽骨という骨の状態、お口の清掃状態などを検査します。
そのほか歯科医師は、口臭を引き起こしそうな口内炎はできていないか、入れ歯はきちんとお手入れができているか、また口腔がんが生じていないかなどもチェックします。
ところで、口臭測定器という口臭の有無や成分を測る専用の装置があります。
これを使えば、口臭の原因物質を特定し、その量を正確に測ることができますので、容易に原因を調べることが可能になります。
口臭測定器を備えている歯科医院なら、それを使って口臭を検出、原因物質を確認します。
歯のクリーニング
歯科での検査の結果、歯周病であることがわかった場合は、歯のクリーニングを行い、お口をきれいにします。
具体的には、歯周病の原因である歯周病菌を減らすためにプラークコントロールや、歯みがきでは取り除けない歯の表面についた石のように硬い付着物である歯石を取り除く治療です。
プラークコントロールが成功するかどうかは、患者さんご自身が日々行う歯みがき、これをセルフケアといいますが、セルフケアがとても重要なカギになってきます。
そこで、効果的な歯みがきができるように、歯科医院では適した歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどを紹介するだけでなく、それらの使い方もしっかりと説明します。
歯周ポケットの深さが浅い場合は、これで歯周病は改善されますが、歯周ポケットが深い場合は、これだけではなかなか改善されません。
そのような場合は、歯周外科治療という外科的な歯周病治療を行う必要があります。
歯周外科治療では、歯ぐきの形を変えたり、深い歯周ポケット内部の汚れや歯石を取り除いたりすることで、歯を支えている歯周組織が健康な状態になるようにします。
また、歯槽骨が減ってかなりグラグラと動いているような歯は、残しておくとかえって他の歯に悪影響を及ぼすので抜歯して取り除かなくてはなりません。
虫歯治療や入れ歯の調整
深い虫歯や入れ歯の汚れなどが口臭の原因になっている場合もあります。
虫歯が認められる場合は、歯科医師は小さな虫歯の場合はコンポジットレジンという歯の色に似たプラスチック製の詰め物による治療で治しますが、大きい虫歯の場合は歯の神経を取り除いて被せ物をつける治療を行います。
入れ歯の汚れが口臭の原因なら、歯科では入れ歯についている歯石をとったり、超音波洗浄器で洗ったりしてきれいにします。
もちろん、入れ歯が歯茎を傷つけて口内炎が生じているなら、その治療も欠かせません。
また、口腔がんを認めた場合は、歯科医院での対応は困難ですので、しかるべき専門病院に治療を依頼します。
口臭と歯科医院への受診 まとめ
ほとんどの口臭の原因が歯科の分野に関わる病気、歯周病(歯槽膿漏)や口内炎、軟組織の壊死・口腔がんなどです。
口臭の治療を始める前に、何が原因で口臭が起きているのかを調べ、口臭の元となっている原因を除去する治療を選ばなければ口臭を減らすことはできません。
まずはかかりつけの歯医者さんに相談して口臭の原因を探ることから始めましょう。
また口臭が歯科の分野以外の原因であることもありますので、この場合は医科のお医者さんに相談をして下さい。医科のお医者さんへの口臭の相談についてはこちらの記事に分かりやすくまとめてあります。
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