歯周病を治す方法はあります!
歯周病でもっとも悩むこと、それはどうやって噛めるようにするか?ということです。
歯周病は、歯の植わっている骨が溶けてしまう骨の病気ですから、進行すればするほど歯を支えている骨が溶けて歯が揺れてしまいます。
もしもそのグラグラの状態のまま入れ歯をつけてしまうとどうなると思いますか?
実は入れ歯を支えている歯が噛む力に耐えられなくなって、そこからまた抜けてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
今はインプラントという良い治療法がありますから、この治療を行うことができれば、少なくとも今残っている歯には負担はかかりません。
しかしインプラントはチタンという金属で出来たネジのようなもので、歯に植得なければならないため十分な骨がなければ行うことができません。
多くの場合、歯周病で歯を失った方の多くは骨がありませんからこうしたインプラント治療を行うことが出来ません。
そこで今回は歯周病が重度でものが噛めない方のために、ドイツ生まれの入れ歯をご紹介したいと思います。
これはあの『明石家さんま』さんもつけている入れ歯といわれ、テレビでもわかる通り全く入れ歯と感じさせない仕上がりになっています。
この入れ歯は『コーヌス・テレスコープ』といい、ドイツの歯科医師ケルバー博士によって開発されました。
コーヌスは『円錐』、テレスコープは『望遠鏡』という意味です。
ドイツはご存知の通りソーセージが有名で、肉を食べる肉食文化です。
ですのでこの文化の中で培われた入れ歯は、肉をしっかり噛めるように設計されています。
今回は口もとの写真を多く載せるため、人によっては気持ち悪く感じてしまうかもしれませんのでご了承ください。
コーヌステレスコープとは??
これは上下の歯に入れ歯をつけた状態です。上が『コーヌステレスコープ』、下が『キャストパーシャルデンチャー』と呼ばれるものです。
実はこの方は奥歯が全くありません。これがその写真です。
この入れ歯は設計が特殊なので外すとサイボーグのような見た目になってしまうのですが、ご飯を食べることを優先的に考えるか、見た目を優先して長持ちしない入れ歯を選ぶかは患者さん個々の価値観にかかってきます。
この歯に装着されている金色の被せ物が、円錐形の先細りの形をしていてまるで『望遠鏡』のように見えたことからコーヌス・テレスコープという名前がつけられました。
下の写真は上顎を見た写真です。鏡に映して撮影したので左右が逆に写っていますが、奥歯がありません。
通常の歯科治療では歯がないところにプラスチックで出来た入れ歯をいれます。
入れ歯は金具で歯がないところの近くの歯に固定されるため、そこに汚れが溜まりやすく力も集中して加わるため、力負けして抜けてしまいます。
コーヌステレスコープの利点
確かに見た目が悪いコーヌステレスコープですが、それを凌駕する良い点がたくさんあります。
①清掃性が良い
歯周病歯もともと歯の周りにプラークと呼ばれる細菌の塊が骨を溶かす病気です。
ですから歯周病の治療が終わった後、歯周病が再発しないようにするためには再びプラークが堆積しないようにしなければなりません。
この点にコーヌス・テレスコープはその形が円錐形で汚れが溜まりにくく、歯と歯の間が空けてあるため歯ブラシが入りやすく清掃しやすい形に設計されています。
②噛む力が最大限発揮できる
コーヌス・テレスコープは通常の入れ歯と違い、すべての歯に入れ歯が覆いかぶさるような設計になっています。
これは時には自分の体重と同じだけの力がくわわる咬合力に耐えるためです。
そして通常の入れ歯は多くの部分を柔らかい歯ぐきの上に乗せているため、噛むたびに入れ歯が沈み込んでしまい噛む力がうまく伝わりません。
この点コーヌスは歯が噛む力を受け止めるので、噛む力を支えることができるのと同時に『噛んでいる』という感触がしっかり得られる入れ歯なのです。
③入れ歯が揺れない
コーヌステレスコープの利点はまだまだあります。
通常の入れ歯は大きく口を開けたり、ベロで入れ歯の端を押すと簡単に入れ歯が浮き上がってしまいます。
これは入れ歯を支える金具を取り付けられる数が限られていることと金具1つ1つの固定力が弱いからです。
しかしコーヌスは歯にかぶっている被せ物の角度を正確に調整することで約500gの力を加えなければ外れないように計算して作られています。
なぜ500gにしてあるかというと、お餅などの粘着性の食べ物が入れ歯を引っ張る力が約500g弱あるからです。
しかし、この強さは設計によって変更することができるため、『弱っている歯には300gで取れる』ようにしたり、『丈夫な歯には700gかけないと取れない』ようにしたりと口の中で歯の状態に合わせて一本、一本設定することができるので、より快適な入れ歯を作ることができます。
④異物感が少ない
先ほどご紹介した写真をみるとわかる通り、コーヌス・テレスコープはほとんど金属で作られていますから、ベロの感触が悪くならないように薄く作っても、丈夫に仕上げることができます。
この薄くと言うのはとても大事で、タレントの『明石家さんま』さんがこの入れ歯をつけています(あえて出っ歯に作っているようです!)が、彼の話が聞きとりにくと感じたことはありません。
むしろ本当に入れ歯をつけているのか?と思ってしまうくらい良く出来ています。
私も彼がこの入れ歯をはめているとを聞いた時は正直驚きました。
その後、彼の写真や番組を何度も口元に注意しながら見ましたが、歯科医師でこのコーヌステレスコープをいつも扱っている私ですらいまだに騙されてしまいます。
それだけ彼のコーヌスは精密に天然の歯に似せて作ってあるのです。
⑤修理が簡単
コーヌス・テレスコープも人間が作ったものですから当然、修理やメインテナンスが必要になることがあります。
一番多い術後の偶発症は『入れ歯が欠けた』です。
多いと言っても、数年に一回ある人かないかで、多くの方は全くなん問題もなく5年、10年と過ごしていらっしゃいます。
しかし仮に壊れたとしても、コーヌステレスコープは各パーツをバラしたいときにバラしやすいようにも設計してあるので、1、2回の来院で完全に修理することができます。
⑥歯が長持ちする
さらにコーヌステレスコープの良いところは、残った歯そのものが長持ちすることです。
研究ではコーヌスを装着することによって、揺れていた歯が揺れなくなり歯周病も安定するという結果があります。
これは私も日々の臨床の中で感じることでコーヌスをつけることで、普通だったら残せないような歯も保存できます。
コーヌステレスコープ《まとめ》
このようにコーヌステレスコープは見た目の問題から一見、躊躇してしまう治療法ですがそのほかの治療方法には無い利点が多く、歯周病専門医の視点から言うと一番おすすめする方法です。