よく歯医者さんに行くと「金を使って治したほうがいいですよ〜」と言われて「え〜?金歯!?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はこの金歯と銀歯の違いをお話ししていきます。
【金歯と銀歯の元素の違い】
金歯と銀歯の大きな違いは、金が入っているか銀が入っているかの違いですが、その他にも違いがあります。
《金歯の組成》
金:75%以上
銀:約5%
銅:約15%
《銀歯の組成》
金:12%
銀:40%以上
パラジウム:約20%
銅:約18%
その他:10%(インジウムなど)
金歯の組成として、金が100%ではないことに驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが、100%の純金はとても柔らかく、金歯としては物性的に弱いので、硬さを出すために銅が混ぜられています。
場合によっては白金(プラチナ)を混ぜて硬さを出すこともあります。
また銀歯の方にも「金」が混ぜられています。
厳密に言うと「銀」は卵などに含まれる硫黄などで腐食してしまうので貴金属ではありません。
よく温泉地でネックレスを外して、入湯してくださいという看板を目にしたことがあると思いますが、それはネックレスに含まれる銀が言おうと反応して真っ黒になってしまうからです。
しかし、金を12%以上混ぜることによって、硫黄などとの反応を防ぐことができるので歯の治療に使う銀合金には少しだけ金が混ぜられています。
また金と同様に銀も単体では硬さがないため、「パラジウム」という金属を混ぜて咬合力に耐えられる硬さを出しています。
その他の元素は合金を安定させるために入っています。
【金歯と銀歯の治療の違い】
金属の組成の違いがわかったところで次は、治療としてどう違うかをお話ししていきます。
基本的にどちらも虫歯になった後を「金属の塊で埋める」という事に変わりはありません。
しかし、どれだけ細かい部分まで埋める事ができるのかという点が違います。
例えば「金箔」は金を薄く伸ばしたものですが、薄くなっても形を保っていられるほどの『粘り』があります。
銀を同じくらいの薄さに伸ばすと、粘りがないためにちぎれてしまい、形を保つ事ができません。
虫歯を治療した後にまた虫歯が発生する事を「二次カリエス」と呼ぶんですが、これは虫歯を取り残しているわけではなく、歯と金属の隙間にばい菌が入り込んで発生します。
特に「銀歯」はこの隙間を埋める能力が低いので、二次カリエスに非常になりやすいです。
ある研究では銀歯をつけた歯は平均して7年後に再度虫歯の治療を行っています。
一方、これは私の経験ですが、「金歯」を装着した歯は二次カリエスになりません。
実際に私が見た患者さんの中で30年前に金歯をつけたという方が大勢いらっしゃいます(当時は金歯しかなかった)が、どの方も二次カリエスはありませんでした。
【金歯と銀歯の価格の違い】
二つの治療の価格の違いは保険治療か自費治療かの違いです。
保険治療での銀歯はもろもろの経費を入れて大体、1万円くらいと考えると良いと思います。
一方、金歯は自費治療になるのでその時の取引されている金の相場によりますが、大体8万円以上です。
価格差は8倍ありますが、二次カリエスで平均7年ごとに治療を繰り返していくと、20歳で初めて治療して70歳になるまでの間に8回再治療がある事になるので、同じくらいの価格がかかるのと、おそらくそこまで治療を繰り返している歯はかなり早い段階で抜歯に至っていると予測できます。
ですので、価格の面だけでなく健康面も加味して治療は選択したほうが良いです。
【金歯と銀歯の持ちの違い】
先述した通り、金歯は圧倒的に二次カリエスになりにくいです。
また、虫歯以外にも「金歯」は装着した後も歯の形に合わせて変形してくれるので、例えば歯が加齢とともに磨耗した場合はそれに合わせて変形してくれます。
また「銀歯」に比べて「金歯」はより天然の歯に硬さが似ているので、噛み合う歯を傷めず長持ちさせます。
このような違いから、金歯は銀歯に比べて圧倒的に持ちの良い治療となっています。
【金歯と銀歯の見た目の違い】
私からするとあまり違いはありませんが、『金歯』と聞くとおばあちゃんを連想する方がいるようです。
いつかお話ししようと思っている「白い歯」に比べると見た目は劣りますが、虫歯になりにくい、噛み合う歯への負担が少ない、壊れにくい、顎関節症を予防する事ができるといった点で治療法としてはかなり優秀な方法です。
しかし、見た目の点も軽視はできませんから、人からあまり見えない上の歯の奥歯などに積極的に使うといいと思います。
実際私は中年から年配の男性の患者さんであれば、特に気にせずどの治療にも「金歯」をお勧めします。
しかし、女性の患者さんに対しては見た目を考慮して上の顎の奥歯の治療は『金歯』、その他の部位は金の上に白いお化粧をした被せ物をお勧めしています。
もちろん女性の中でも金属色は気にならないという方も大勢いらっしゃいますので、そういった方には金歯をお勧めします。
【まとめ】
以上のように、金歯と銀歯には見た目以上に物性や治療後のもちに差が出てきますので、経済的な状況と照らし合わせて治療法を選択していくと良いと思います。