「大切な人に歯周病がうつるのが怖い…」と思っている方…。
たしかに歯周病は症状が出にくく知らぬ間に進行しやすいので、うつらないように日頃から注意しておくのがオススメな疾患です。
とはいえ、具体的にはどのように予防すれば、赤ちゃんやパートナーを歯周病から守れるのか分かりませんよね。
そこでこの記事では、歯周病専門医である筆者が、以下の順番で歯周病がうつる原因や予防法を紹介していきます。
「歯周病の感染を防ぐ」というとハードルが高く感じるかもしれませんが、おさえるべきポイントはそこまで多くありません。
ぜひ、この機会に大切な人を守るコツをおさえていきましょう!
歯周病はうつるのか?原因は唾液にあった
結論からお伝えすると、お口の中にある歯周病菌は唾液を介して人にうつります。
つまり、
- 口移し
- スプーンや箸などの食器類の共有
- キスによる唾液交換
などの行為が「歯周病がうつる」といった結果に繋がってしまうのです。
特に生活を共にしている家族や同棲しているカップルは、唾液感染のリスクがより高くなります。
感染予防の情報を家庭内で共有して、日頃から注意しておくのがオススメでしょう。
歯周病がうつるのを予防する5つの方法
歯周病がうつるのを予防する際に重要なポイントは、大きく分けて以下の2つになります。
①感染経路を極力絶つ
②感染しても、歯周病菌が増殖しないようにする
なぜなら、①で歯周病菌の感染リスクを減らし、②で仮にうつったとしても歯周病が重症化しないよう注意することで、歯周病の発症や進行を防げるからです。
①と②のどちらかだけではなく、2段構えの予防法で大切な人のお口の健康を守っていきましょう。
具体的な予防法については、5つにポイントを絞ってこの次に紹介していきます。
赤ちゃんへの口移しや箸・スプーンの共有は避ける
歯周病がうつるのを防ぐためには、赤ちゃんを含む同居家族で歯周病がうつらないようにする環境作りが必要になります。
具体的には、先程もお伝えした
- 口移し
- スプーン・箸などの食器類の共有
- キスによる唾液交換
といった行為を極力避ける方法と、後述する『歯の汚れ(歯垢)を取り除く』を家族全員で徹底するのがオススメです。
特に「感染の窓」と呼ばれている生後19ヶ月(1歳7ヶ月)前後の時期の赤ちゃんは、歯周病菌・虫歯菌共にうつりやすくなっているので、より注意をしてください。
ペットの唾液が口に入らないように注意する
実はペット(犬や猫など)の歯周病菌も、唾液を介して人にうつるという研究結果※が出ています。
そのため、ペットを飼っている方は、
- 口周りを舐められて唾液感染しないように注意をする
- ペットの歯の汚れも取り除いて歯周病菌を減らす
の2点を実践するのがオススメです。
※出典:人獣共通感染症としての犬歯周病に関する研究 (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658256/)
歯の汚れ(歯垢)を取り除く
歯周病は歯の汚れ(歯垢)が蓄積されることで、歯周病菌が増殖して発症・進行します。
つまり、お口の清掃状況をしっかり整えていれば、たとえ外部から歯周病菌が侵入してきても、歯周病菌がお口の中で悪さをするのを防げるのです。
そのため、歯周病がうつらないように注意すること以上に、歯の汚れ(歯垢)を取り除くことは重要になります。
具体的には、
- 日々のセルフケア(歯磨き、フロス、歯間ブラシ)
- 歯医者でのクリーニングや定期検診
の2つを同居人全員で徹底しておくと、歯周病がうつってもお口の健康を守れる可能性が高まります。
喫煙をやめる
喫煙が歯周病にかかるリスクを上げることは、歯周病専門医の中では常識です。
実際に日本臨床歯周病学会のホームページでも、以下のように公表されています。
歯周病にかかる危険は1日10本以上喫煙すると5.4倍に、10年以上吸っていると4.3倍に上昇し、また重症化しやすくなります。
(中略)
禁煙することで、この危険性が下がっていくことも、研究の結果解っています。「歯周病にかかりやすさ」は4割も減ります。
引用元:歯周病と煙草の関係/日本臨床歯周病学会 (https://www.jacp.net/perio/cigarette/)
つまり、歯周病菌がうつっても重症化しないお口の環境作りをするためには、同居人内での禁煙が重要になってくるのです。
生活習慣を見直す
歯周病は免疫力を上げることで、仮にうつったとしても重症化するのを防げます。
具体的には、体の健康を阻害する以下の要素を生活から排除すると、結果的に歯周病の発症や進行を防げる確率が上がるのです。
- 不規則な食生活
- 睡眠不足
- ストレスをためる
歯周病がうつる!感染リスクが高い人の特徴
歯周病がうつるのを予防する際に、特に以下の特徴を持つ人は感染リスクが高いので、より注意をして生活するのがオススメです。
妊娠中の方
妊娠中は以下の影響で、通常よりも歯周病リスクが高まっています。
- つわりによる食生活の乱れや歯磨き不足
- ホルモンバランスの変化
また、妊婦が歯周病を発症すると、早産や低体重児出産のように胎児や出産にも危険が及びやすいので、より注意が必要です。
喫煙者
『喫煙をやめる』でもご説明したように、喫煙者の方は非喫煙者に比べて約4~5倍も歯周病リスクが高くなっています。
糖尿病の方
糖尿病の方は、歯周病が感染した際に重症化しやすいといったリスクがあります。
実際には文献上の決着がついてない部分も多いですが、厚生労働省のe-ヘルスネットでは以下のように記されているので注意をしておくのがオススメです。
糖尿病があると歯周病関連細菌により感染しやすくなり、炎症により歯周組織が急激に破壊され、歯周炎が重症化していきます。
引用元:歯周病と全身の状態 糖尿病と歯周病の双方向性/e-ヘルスネット (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-012.html)
お口の環境が悪い方
以下のようにお口の環境が悪い方は、歯周病にうつるまたは重症化するリスクが高まりやすいです。
- 清掃不良で歯に汚れがついている方
- 不適合な人工歯が入っている方(入れ歯やかぶせ物など)
- 歯ぎしりや食いしばりなどでかみ合わせによるダメージが歯にかかりやすい方
45歳以上の方
歯周病は年齢を重ねると共に、うつりやすくなるだけではなく重症化しやすい傾向があります。
特に、45歳以上の方は歯周病を発症する確率が一気に増加するだけではなく、歯周病によって歯を失う人が増えるので、より予防に力を入れるのがオススメです。
歯周病がうつると、どうなる?
歯周病の最大のデメリットは、「うつる」「発症する」の2ステップを踏んでも、歯周病の自覚症状が出にくいところにあります。
つまり、感染した人が痛みや腫れを感じる段階になったときには、すでに歯周病がかなり進行・重症化してしまっているケースが多いのです。
歯周病はその特性から、沈黙の殺人者 (サイレントキラー)とも呼ばれています。
「どのくらい進行してから自覚症状が出るのか?」については、この次に詳しく説明していくので参考にしてください。
進行レベルで変わる症状やお口の状態
歯周病の進行レベルは大きく分けて、以下の4段階になります。
進行レベル | レベル1
(歯肉炎) |
レベル2
(軽度歯周炎) |
レベル3 (中等度歯周炎) |
レベル4 (重度歯周炎) |
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|
自覚症状 |
ほとんどない |
歯茎からたまに血が出る |
歯茎が腫れたり、膿が出る |
歯がグラグラする |
歯周病にかかっていることに初期の段階で自分で気づくのは困難であり、重症化する前に治療するためには、歯医者に行って定期検診を受けるしかありません。
歯を失う原因の第1位になっている歯周病の予防は、虫歯以上に歯のプロ(歯医者)によるサポートが必要なのです。
歯周病と関係性が深い病気
歯周病がうつるのを予防するのは、実は全身の健康を守ることにも繋がります。
なぜなら、歯周病は以下のような病気とも関係が深いからです。
【歯周病と関係性が深い病気】
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳梗塞
- 糖尿病
- 妊娠性歯肉炎
- 低体重児早産
- 誤嚥性肺炎
- 骨粗鬆症
- 関節炎・腎炎
- メタボリックシンドローム
出典:歯周病が全身に及ぼす影響/日本臨床歯周病学会(https://www.jacp.net/perio/effect/)
重症化した歯周病を放置したままにすると、最悪”死”に至るケースもあります。
自分と大切な人の体の健康を守るためにも、歯周病予防には力を入れるのがオススメです。
歯周病がうつる原因と予防法のまとめ
それでは最後に、歯周病がうつる原因と予防法を簡単におさらいしていきます。
【歯周病がうつる原因】 →唾液を介して、人にうつる
歯周病は自覚症状が出にくく、セルフケアだけでは管理しにくい疾患です。
歯医者の定期検診でプロによるサポートも受けながら、同居人全員で予防ケアに力を入れていきましょう!