国が行った調査によると日本人の45%が歯周病になっている事が分かっています。これは調査するごとに悪化していてもはや歯周病は国民病と考えて良いです。
この記事では患者さんから質問が多い、「歯周病は1日で治るか?」ということに関して解説をしています。
◆目次
- 歯周病の治療方法
- 歯周病は1日で治るか?
- 歯周病は1日で治せるか 結論
私は歯周病の治療に12年以上携わり、歯周病専門医としても5年以上の経験と東京にある自分のクリニックでも多くの歯周病患者さんを治療している経験から、この記事の信憑性は担保できます。
現在はアメリカのフロリダ州の歯科大学でインプラント周囲炎の研究もしています。
歯周病の治療方法
歯周病の治療方法は次の4つの段階に分けられます。
- 歯周基本治療
- 歯周外科治療
- 歯周補綴治療
- 歯周病メンテナンス
歯周基本治療
歯周基本治療は、歯周病が発症した原因を取り除く最初の段階の治療です。
歯周病はプラークなどの汚れが溜まった場所から発症しますので、プラークが溜まりやすい場所を改善して溜まりにくい形に整えていきます。
具体的な方法としては
- 虫歯を治療する
- 歯石を除去する
- 歯並びを治す
- 噛み合わせを調整する
- 適合の悪い被せ物を外して、仮歯にする
- 歯周病ができるような生活習慣があれば改善していく
などがあります。虫歯や歯石があると歯の形が凸凹するので汚れが溜まりやすくなりますし、歯並びが悪かったり噛み合わせが変だと特定の歯に負担がかかるため歯周病が悪化します。
適合が悪い被せ物は、噛み合わせにも影響が有りますし、汚れが溜まりやすくなる原因となるからです。
またタバコを吸ったりしていると歯周病になるリスクが4倍跳ね上がるため禁煙も歯周病治療の一環です。
最近はお薬が発達してきたので、禁煙もだいぶ楽になりました。根性論だけでなく禁煙ができるようになってきたのでもし、タバコを吸われている方は禁煙外来を受診してみることをお勧めします。
歯周基本治療は一番基本的な治療なので、汚れが歯石が取れる深さに限度があり、5ミリよりも深い位置に付いている歯石は取れません。
そこで、基本治療が終わって、まだ歯石が付着している場合は「歯周外科治療」に移行します。
歯周外科治療
歯周外科治療の目的は根本的に歯周病を治すことです。
歯周外科治療の目的は以下の通りです。
- 基本治療で取りきれなかった歯石をとる
- 歯周病で凸凹になってしまった骨の形を整える
- 将来また歯周病にならにように歯茎の強化をする
- 歯周病で溶けてしまった歯槽骨を再生させる
- インプラント治療の最初の段階の手術をする
などです。特に歯周病の状態が重症であればあるほど、歯周外科治療が必要になってきますし、歯周外科治療で治す事ができない歯に関しては抜歯をしていくことになります。
どうして抜歯をするかというと、歯周病の原因となっている歯が存在する限り歯周病が再発しますし、隣の歯に悪影響を与え続けるからです。
抜くべき歯を諦めがつかずに残しておく事で、隣の歯が悪影響を受けて「結局抜かなければならない歯が増える」という患者さんは少なく有りません。
歯周補綴治療
歯周病でやられた歯や歯槽骨を安定させるための治療です。
「ししゅうほてつちりょう」と読みます。補綴治療は一般的な銀歯や詰め物の治療とは異なり、歯根や歯槽骨に再び過度な噛み合わせの力が加わらないようにして治療後の状態が長く続くようにするために行います。
歯周補綴治療には次の治療があります。
- 入れ歯
- ブリッジ
- コーヌステレスコープ義歯(特殊な入れ歯)
- インプラント
どれが一番良い治療というのはなく、適材適所で選択していきます。
しかし、インプラント治療はうまく使うことでお口全体のバランスをうまく整える事ができます。
歯周病メンテナンス
メンテナンス治療は、歯周病治療が終わった後の状態を持続させるための治療です。
例えば同じ程度の歯周病だった場合、メインテナンスをするのとしないのとでは、15年後に残っている歯の数にかなりの差が出る事が研究から分かっています。
せっかく良い歯周病治療をしてもメンテナンスに通わなかったら再発して、歯が喪失する原因となるので、大変かもしれませんがメンテナンスは3ヶ月に1回通って下さい。
歯周病は1日で治せるのか?
歯周病を1日で治す現実的な治療法とは?
歯周病を1日で治せる条件は3つ考えられます。
- 歯周病の程度が軽い
- 自費治療で歯周外科治療をする
- 抜歯を一気にする
歯周病の程度が軽い
歯周病の状態が軽度〜中程度であれば、一回の治療で歯石を除去することで治せます。
しかし、あくまでも歯石のみが原因で、歯並びが良くて虫歯がない、被せ物の適合が良くて歯ブラシがきちんとできている人限定の話です。
私の経験からこういった患者さんは非常に稀です。
あり得るとすると遺伝的に歯周病菌に対する免疫が以上に弱くて、歯周病の進行が早い場合が考えられますが、こういう人は思春期にすでに歯周病になっているはずです。
また、1回の治療で全ての深い場所の治療をすると、菌が血管の中に入り菌血症と発熱が起きることも研究から分かっています。
私がいま最新の治療を学んでいるアメリカは、日本と比べるとかなり効率的で合理的な治療をしますが、それでも1回の治療で全ての歯を掃除する治療法はリスクが高いので滅多に行いません。
自費治療で歯周外科治療をする
どうしても日本の保険制度の都合上、根本的な治療方法である歯周外科治療にいきなり行くことはで出来ません。
日本の保険治療は、歯周病治療のステップが細かく決められていてこのステップに則って歯周病治療を行うと歯周外科治療ができるようになるまで、最短でも3ヶ月間が必要です。
しかし、自費治療を選択することでこういった規則を無視して治療を行えますので、いきなり歯周外科治療を受ける事ができます。
私が現在学んでいるアメリカでも保険治療というのがなく、いきなり外科治療に行く事ができますので、治療としてはサクサク進みます。日本もこういったところは見習うべきです。
しかし、いくら効率が良いアメリカ方式の治療であっても1度に全ての部位を外科治療が出来るわけではなく、少なくとも4箇所に分けて治療を行うので1日で歯周病治療を終わらせることはできません。
一気に抜歯をして歯周病を治す
歯を抜歯することで、歯周病の原因を根こそぎ除去できます。
歯周病は歯の周りにくっついたバクテリアの塊やその死骸が原因でおきますので、抜歯をすることで歯ごと原因を除去する事ができます。
実際に、歯周外科治療でも治せない歯は抜歯をしますし、こういった歯は抜歯以外の選択肢がありません。
例えばアメリカでは一気に10本抜歯するなんてことも珍しくありません。
特にインプラント治療を選択する場合、抜歯を一気に進めていくことで、治療期間の短縮だけでなく、抜歯による骨の減少を最小限に抑えてより好条件でインプラント治療をする事ができます。
また、歯周病は歯があってこそ発症するので、歯がなければそもそも歯周病にはなりませんので将来的な歯周病を予防することになります。
しかし、歯周病の原因となる歯を抜歯するだけで、実際に噛めるようになるまで回数がかかるので厳密には歯周病治療が1日で終わったとは言えません。
歯周補綴治療のメリットとデメリット
歯がなくなるということはその部分に何かしらの歯(補綴物)を入れなくてはいけませんので、補綴物にまつわる問題が発生する可能性はあります。
補綴物にまつわる問題点は次のものが考えられます。
- 入れ歯の違和感がある
- 入れ歯を固定している歯に負担が集中する
- 入れ歯が邪魔で発音が上手くできない
- ブリッジをかぶせるために、隣の健康な歯を削らなくてはいけない
- ブリッジ周りに汚れが溜まりやすい
- インプラント治療のために外科治療が必要
- インプラント周囲炎のリスクがある
その他にも細かい事が考えられますが、自然の歯に近い治療はごく限られていて、インプラント治療が最も自然な歯の感触を得るのに適しています。
逆に各治療ごとのメリットは次の通りです。
- 入れ歯:保険治療で安価な治療を選べる。自費治療を選ぶと選択肢が増える
- ブリッジ:歯を固定する効果がある。
- インプラント:歯の数を増やせるので、残りの歯の負担が減る
歯周病は1日で治せるかどうか 結論
歯周病を1日で治療することはできません。
歯周病は糖尿病や肥満といった生活習慣病と同じく、日常生活に深く根ざして発症する病気だからです。
例えば、糖尿病が1日で治るという話は聞いた事がないはずです。肥満も1日では治りません。また生活のリズムを改善しなくては、良い病院で良い治療を受けたとしても治りません。
しかし、病院を巻く選ぶ事で歯周病治療の期間を短縮できます。この場合、保険治療ではどうしても出来る治療に限りがあるので、自費治療が中心の病院を選ぶ事が重要です。
例えば私のような歯周病専門医やインプラント治療であればアイデンタルクリニックなどがインプラント治療の経験が豊富なので安心して治療を受ける事ができます。
またメインテナンスがしっかりとした病院を選ぶことも大切です。メインテナンスも保険治療と自費治療とで出来る内容に差があるので、病院を選ぶ際の参考として下さい。
- インプラント治療で定評のある歯科医院 → アイデンタルクリニック
- 日本歯周病学会 専門医名簿 → 日本歯周病学会HP(認定医と専門医がいるので専門医のみを探すようにして下さい。)