歯周外科での生理食塩水の役割
歯周外科では生理食塩水をよく使用しますが、なんのために使用しているかご存知ですか?
あれには単に洗い流す以上の意味合いがあります。ではこれからで説明していきましょう。
① 骨を冷やす
歯周外科に用いる生理食塩水は必ず使用ギリギリまで冷蔵庫で冷やしてください。特に夏場は室温で簡単にぬるくなってしまいますから、オペが始まって麻酔が終わったくらいに冷蔵庫から取り出すくらいがちょうど良いです。
骨を冷やす意味合いは術後の腫脹を減らすことが目的です。オペ中によく冷しておけば、まず腫れ上がるはありません。
② 術野を確保する
オペ中に術野を確保するというのはとても大切です。まれに入ったばかりのスタッフにオペアシをしてもらうと、術野がよく見えないため、予期せぬところを切ることがあります。
このため助手の訓練の方法として、外科用のアスピレーターを左右どちらの手でも使えるように訓練したのちに、アスピレーターを持っていないもう片方の手で生理食塩水入りのシリンジをもち、シリンジが上流アスピレーターが下流に来るようにすると水の流れができて、術野をしっかり確保しつつ骨を冷やすことができます。
③ 炎症性サイトカインを洗い流す
歯周外科を初めてまもなくすると炎症性サイトカインが放出されます。これをこまめに洗い流していくことも、歯周外科を成功させるためのコツです。
④ 血餅を作らせない
血餅があるまま縫合してしまうと術後の治癒が遅くなる可能性があります。フラップは必ず骨と密着させた状態で縫合し、最後に少し生理食塩水で濡らしたガーゼで圧迫してさらに密着させるようにします。
わたしが大学病院で研修していた時代はとにかくこの生理食塩水とアスピレーターの使い方を教授から注意されました。
私が最初についたオペは始まって『5秒』で教授から『交代して』と言われました。理由はアスピレーターの持ち方が全くわかっていなかったから。その時はくやしくて先輩の動きをよく観察して研究したものでした。
しかしオペアシが一番うまくなる方法は、実際に自分がオペをしてみるということが一番です。これによりアシスタントワークは格段に見違えるようになります。
自分がオペをすることにより術者がどこをどう見ているのかがわかるようになるからです。
もしもこれを読んでいる方が研修医やまだ歯科医師になりたてのドクターであればまずは1症例どんなかんたちでも良いので歯周外科を行っていくことをおすすめします。
もしもこれを読んでいる方が歯科助手や歯科衛生士さんであれば、豚の顎を使って歯周外科を体験してみるとかドクターに頼んでフラップを開けた後の肉芽掻爬やスケーリングをさせてもらうと良いと思います。
あなたが勉強したいという思いを疎ましく思うドクターはいませんから、気軽に頼んでみて良いと思います。
また歯周外科デジタルでは歯周外科に関する記事を書いてありますので参考にしてみてください。