口臭を予防したい方へ。
この記事は「口臭予防ができるかどうか知りたい」「専門家に口臭予防の方法を教えて欲しい!」という方のために執筆しています。
この記事を書いている私は現在、某市民病院で口腔外科医として働き親知らずの抜歯や口腔がんの検査をする傍ら、口臭に悩む患者さんの検査や治療も10年以上行っています。 この記事は私がこれまで得た医学的な知識と実際の診療に携わる中で患者さんと接する中で得た経験をもとに書いていますので、信憑性は担保出来ていると思います。
「口臭は予防できる? 口臭の予防法について」
口臭を人から指摘されると、ほとんどの方が心理的にとても辛くなります。
口臭は予防できるのでしょうか。
全ての口臭を予防できるわけではありませんが、中には予防できる口臭もあります。
予防できる口臭と予防できない口臭を知って、できるだけ口臭を予防していきましょう。
口臭の種類
口臭と一言で言っても、実は口臭にはいろいろなタイプがあり、2つに分けることができます。
一つは生理的(せいりてき)口臭、もう一つが病的(びょうてき)口臭です。
生理的口臭とは、発生するのが正常な口臭です。
生理的口臭としてよく知られているのが、食後の口臭です。
ニンニク料理を食べた後や、アルコールを飲んだ後に口臭がした経験のある方も多いことでしょう。
そのほかにも、朝起きた時の口臭や緊張した時に生じやすい口臭なども生理的口臭に含まれています。
一方、病的口臭とは、何らかの病気が背景にあって発生している口臭のことです。
病的口臭の引き金になる病気で最も多いのが、歯周病などのお口の病気です。
歯の磨き残しや歯石から口臭の元となるニオイが発生するのです。
病気とは言い難いですが、舌苔とよばれる舌の表面についた付着物も口臭の原因となりうる場合があります。
お口の病気以外では、糖尿病や腎臓病、胃潰瘍などの胃腸疾患も口臭の原因となります。
口臭予防ができるタイプ
口臭にいろいろなタイプがあることは前述した通りです。
では、このうちどのタイプが予防できる口臭なのでしょうか。
それはお口の病気によって生じる口臭です。
歯周病になりますと、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットが深くなります。
歯石もついてきます。
浅い歯周ポケットは歯ブラシを傾けることできれいにできます。
しかし、歯周ポケットが深くなったり、歯周ポケットの上側に歯石がついたりすると、歯ブラシだけでは磨けなくなり、そこで歯周病菌をはじめとするさまざまな細菌が繁殖するようになります。
細菌がニオイの元となる物質を作り出し、口臭が生じるのです。
むし歯による口臭も同じで、むし歯の穴のなかで細菌が繁殖する結果、口臭が発生します。
このようにお口の中にいる細菌が原因で起こる口臭なので、細菌の活動をコントロールすれば口臭も解消できます。
口臭予防ができないタイプ
一方、予防できない口臭の中でも多いのが、生理的口臭です。
食後に生じる口臭は、確かにニンニクやニラ、タマネギなどを避けたり、アルコールをやめたりすれば防げます。
そう言った意味では防げる口臭に含めてもいいかもしれませんが、料理に入っているニンニクやニラ、タマネギを取り除くことはできませんし、付き合いなどによりアルコールを飲まなければならない場面もあります。
社会生活を送る上で避けられないと考えられるので、食後の口臭は防げない口臭に含まれます。
また、朝起きた時の口臭は、寝ている間口が閉じていることが原因で起こる口臭なので、人間は生きていく上で睡眠が欠かせませんから、やはり防げない口臭となるわけです。
そのほか、糖尿病や腎臓病、胃腸疾患などの病的口臭は、原因となる病気の治療を受けなければ改善しない口臭です。
お口の磨き残しなどと違って、ご自身で予防する方法はありません。
医療機関を受診して、きちんと治療してもらい、口臭を解消しましょう。
専門家が教える口臭予防の方法
さて、口臭は予防できるタイプがあることは前述した通りです。
そこで、専門家としての立場から、口臭の予防法、つまり口臭ケアの方法をわかりやすく説明していこうと思います。
自分でできる口臭予防とは?
ご自身でできる口臭予防は、プラークコントロールです。
プラークコントロールという言葉は、歯ブラシや歯磨き剤のCMなどでお聞きになったことがあるかもしれませんが、歯についたプラークを取り除いて、歯をきれいな状態にすることです。
歯の表面を爪や爪楊枝などで擦ってみて下さい。
白いカスのようなものが取れてくると思います。
これがプラークで、その正体はさまざまな細菌の塊です。
プラークの中にいる細菌たちが、むし歯や歯周病などのお口のトラブルの元になっているわけですが、口臭のニオイの元になる物質も作っています。
プラークコントロールで歯をきれいにすれば、口臭の原因となるニオイの発生が防げるので、口臭の予防が図れます。
プラークコントロールで特に注意して磨いてほしいところは、歯と歯の間です。
歯と歯の間は、食べかすが挟まりやすく、プラークもつきやすい場所です。
歯ブラシだけではなかなか磨けないところでもあるので、歯間ブラシやデンタルフロス(糸楊枝)などを使って、気をつけて磨くようにして下さい。
歯医者さんで出来る口臭ケア
口臭の原因の中で最も多いのが、歯周病などのお口の病気です。
お口の病気の専門家は歯医者さんです。
歯医者さんでも、やはりプラークコントロールを重視した口臭ケアを行います。
歯医者さんで行われるプラークコントロールはスケーリング・ルートプレイニングとPMTCです。
スケーリングとはスケーラーという専用の器械を使って歯石を取り除くこと、ルートプレイニングとは、歯根の表面に染み込んだ汚れや歯根の表面の歯石などを取り除くことです。
歯石は、プラークが古くなって石のように硬くなったもののことで、歯ブラシでは取り除くことはできません。
スケーラーを使って歯医者さんで取り除くほか、方法はありません。
スケーリングとルートプレイニングは、どちらかだけでは効果がありません。
合わせて行うことが大切なので、スケーリング・ルートプレイニングと合わせて表記されています。
頭文字をとってSRPと表記することもありますが、意味は同じです。
PMTCとは、Professional Mechanical Tooth Cleaningの略で、機械的歯面清掃と訳されています。
電動歯ブラシのような専用の器械、研磨剤を使って、歯の表面をきれいに磨き上げる処置のことです。
スケーリング・ルートプレイニング、PMTCが終わった歯は、プラークやその他の汚れがなくなり、非常にきれいな状態になります。
歯医者さんの口臭ケアではこのような方法で、歯のクリーニングを行い、口臭を予防します。
意外と知られていない心理的な口臭ケア
本当は口臭は生じていないのに、周囲の人の仕草を勘違いして、口臭が生じていると思い込んでしまう病気を自臭症(じしゅうしょう)といいます。
自臭症の方達は、常に口臭の不安に苛まれています。
自臭症の場合の口臭ケアは、その他の口臭ケアとは異なります。
自臭症の口臭ケアは、本当は口臭は生じていないということを正しく理解することから始まります。
そのためには、まずは口臭チェッカーなどの口臭をチェックする機械を使って客観的に口臭がない、もしくは問題がない低レベルであることを理解することが大切です。
また、「お口の中をきれいにしていれば、口臭は発生しない。たとえ口臭が発生したとしても一過性のものなので心配する必要はない」ということを、心にインプットすることも忘れてはいけません。
自臭症の場合の口臭ケアは、口臭というニオイそのものへの対策だけではなく、精神的なケアも必要となります。
予防できる口臭とできない口臭 まとめ
多くの口臭は実際に起きている口臭なので予防する策があることが分かりましたね!
自臭症は心理的口臭とも呼ばれ、いわゆる心の病気で実際に口臭が発生していようがいまいが、口臭があると信じ込んでいる状態なので予防のしようがありません。
こういった方はまず客観的に口臭があるのかを判断することが大切で、口臭チェッカーなどの数値で口臭の強さがでるグッズなどを使って調べてみることをおすすめします。
またタバコを吸っている人は嗅覚が麻痺しているので、自分では口臭がないと感じていても実際はあったりしますのでこういった人にも口臭チェッカーはおすすめです。