今回は『日本糖尿病学会』が出したガイドラインを元に糖尿病と歯周病の関連性についてお話ししていきます。
糖尿病と歯周病は関連する!
2013年に日本糖尿病学会は医学的な根拠を元に正式に糖尿病と歯周病の関連性を認めました。
- 糖尿病と歯周病は相互に負の影響を与える。
- とりわけ血糖コントロールが不良な患者ほど歯周病の重症度が高く、より進行するリスクが高い。
- 重度の歯周病を放置すると血糖値のコントロールに悪影響を及ぼす可能性がある。
- 2型糖尿病患者に歯周病治療を行うと、血糖値が改善する可能性がある。
【2型糖尿病とは】おもに生活習慣が問題となり、血糖値をコンントロールするインスリンという物質が体内で作られなくなってしまう糖尿病です。
ちなみに1型は生まれつきインスリンを作ることができない遺伝的な要素により起きる病気です。
アメリカのデータベースを使った研究では、歯周病はこのどちらの型の糖尿病も悪化させるとわかっています。
- (Tsai C, Hayes C, Taylor GW:Glycemic control of type 2 diabetes and severe periodontal dis-ease in the US adult population. Community Dent Oral Epidemiol 30:182-192, 2002)
さらに米国の研究では歯周病患者は健康な人に比べて2倍糖尿病にかかりやすいこともわかっています。これは日本人を対象に行った実験でも同様の結果が出ています。
- Soskolne WA, Klinger A:The relationship between periodontal diseases and diabetes:anoverview.Ann Periodontol 6:91-98, 2001
- Demmer RT, Jacobs DR, Jr., Desvarieux M: Periodontal disease and incident type 2 dia-betes:results from the First National Health and Nutrition Examination Survey and its epi-demiologic follow-up study. Diabetes Care 31:1373-1379, 2008
またそのほかに歯周病は糖尿病腎症や虚血性心疾患さらに総脂肪量がより増加することもわかっています。こちらに関する詳しい記述はこちらをご参照ください。
糖尿病治療の目標とは?
糖尿病治療の目標は、血糖値を適正に管理するだけではなく糖尿病によって起きる様々な合併症を取り除き健康な人と変わらない《生活の質》を維持することです。
血糖値の管理には『HbA1c』という数値を使います。
HbA1cは血液中の赤血球にくっついている糖分の値を表しています。
HbA1cは赤血球とゆっくり結合するため、食事で一時的に血糖値が上昇しても影響を受けません。
また赤血球の寿命は120日前後なので、最近数ヶ月の血糖値の状況を把握するのに適しています。
HbA1cの基準の変更
平成25年までは古い基準を使っていたため、糖尿病治療のHbA1c目標値は6.5%でしたが、平成25年6月からは7.0未満に変更されました。
これは今、世界基準になっています。
血糖値コントロール上の注意
私が以前治療させていただいた患者さんにHbA1cが10.0を超えた型がいらっしゃいました。
『10.0』というとかなり危険な域に達する数値で残念なことにこの方は歯科医院をたらい回しにされ、最後に私のクリニックに来院されました。
この時、HbA1cの値に私も驚いたので、病院でしっかり血糖値のコントロールをするようにとお話しして、一度1週間ほど入院して血糖値の管理をする頃になりました。
入院生活のおかげで血糖値が10.0を超えた値から9.2まで下がりましたが、逆にこの急激な血糖値の変化が網膜に悪影響を与えてしまったらしく、目がぼやけて見えずらくなってしまったとおっしゃってました。
このように血糖値は薬で下げることができますが、急激な変化は身体に影響を与えるためやはり生活習慣の見直しや食事療法でゆっくり少しづつ下げるほうが賢明なようです。
その他に日本糖尿病学会のガイドラインには具体的な糖尿病の治療法についても記述がありますが、私も歯周病専門医として病気の治療法は一筋縄ではいかないことは理解しています。
担当する医師によって行う方法も違うと思いますので、ここでは具体的な治療法に関する名言は避けます。
詳しい治療法の問い合わせは日本糖尿病学会が定める『糖尿病専門医』に問い合わせてみてください。現在全国で5000人前後いるようです。
日本糖尿病学会 専門医検索ページ
http://www.jds.or.jp/modules/senmoni/
一般的な糖尿病治療の流れを図にしたものを下に貼っておきます。
また糖尿病学会が刊行しているガイドラインはここから閲覧することができます。
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
http://www.jds.or.jp/modules/publication/?content_id=4