今日は面白い情報を仕入れたのでさっそくみんなに紹介しようと思います!
ちなみに今日のは少し専門的なので悪しからず。
ピンホールテクニックって何??
ピンホールテクニックとは、アメリカカルフォルニア州の歯科医師、パット・アレンが編み出した歯周形成外科のテクニックの1つ。
これまで歯肉退縮などに対する審美的な治療方法として、部分層弁で切開しての結合組織移植術が主流だった。
この従来法は術式の性質上、歯肉を剥離する面積が多く、歯間乳頭部からの血液供給が分断される場合もあり、術後の移植片の生着に不安が残ったり、退縮するリスクが高くなったりする危険性があった。
審美形成外科『ピンホールテクニック』の術式
ピンホールテクニックは、これまでのエンベロープフラップのような方法ととてもよく似ている。
エンベロープ法とは、カンガルーのお腹のポケットのように歯肉に袋状の切開を入れてる方法だ。
従来の方法とは違い、歯肉溝から切開をいれて極力血流を分断しないようにするので、移植した結合組織片が生着しやすい。
しかも術後の退縮があまりないので、審美的な治療が要求される領域や角化歯肉がほとんどないような部位にも適応できる。
一方でかなりテクニックセンシティブな治療方法なので、歯周病専門医やそれなりのプロでなければ安易に手は出さない方が良い。
ピンホールテクニックは、この方法をさらに改良して、『カンガルーのポケット』から『カンガルーの臍』くらいに極限まで切開エリアを縮めた方法だ。
切開後の移植片はマリオネット縫合で従来通り行えるから、今すでにエンベロープフラップが行える人は練習してみると良いかもしれない。
実はたろぺは今アメリカに留学していて、周りのレジデントがみんなこの方法を使ってるので、カルチャーショック受けてます。
結合組織を移植した後の予後は??
画期的な歯周形成外科であるピンホールテクニックなわけだけども、気になるのは術後の成功率やロンジェビティだよね。
以下に上げるパラメータはChao先生の研究結果を引用したものだから、バイアスがないとは言い切れないけどまずはこれを信じるしかない。
しかもテクニックセンシティブな面はエンベロープフラップよりも強いはずだから術者によって大きく変わるとも思う。
クリニカルパラメータ
パラメーター | 全部位 | Mirror Class 1&2 | Mirror Class 3 |
部位数 | 121 | 85 | 36 |
評価期間(月) | 18±6.7 | 20±6.7 | 15±5.2 |
ベースラインの退縮量(㎜) | 3.4±1.0 | 3.3±1.0 | 3.6±1.1 |
残存した歯肉退縮量 | 0.4±0.8 | 0.2±0.5 | 0.9±1.0 |
根面被覆した量(㎜) | 3.0±1.1 | 3.1±1.1 | 2.7±0.9 |
完全に根面被覆できた部位数 | 84 | 69 | 15 |
完全に根面被覆できた割合 | 69.4% | 81.2% | 41.7% |
90%以上根面被覆できた割合 | 77.7% | 90.6% | 47.2% |
ベースライン時のポケット深さ(㎜) | 2.6±0.7 | 2.6±0.6 | 2.4±0.9 |
残存した歯周ポケット深さ(㎜) | 1.2±0.4 | 1.2±0.4 | 1.3±0.5 |
減少した歯周ポケット深さ(㎜) | 1.4±0.8 | 1.5±0.7 | 1.1±0.9 |
ベースライン時のアタッチメントレベル(㎜) | 6.0±1.3 | 5.9±1.2 | 6.0±1.6 |
残存したアタッチメントレベル量(㎜) | 1.6±0.9 | 1.4±0.6 | 2.2±1.1 |
アタッチメントゲイン(㎜) | 4.4±1.4 | 4.6±1.3 | 3.8±1.5 |
ベースライン時の角化歯肉幅(㎜) | 0.8±1.6 | 1.1±1.8 | 0.0±0.0 |
残存している角化歯肉幅(㎜) | 3.0±1.1 | 3.3±0.8 | 2.5±1.3 |
増加した角化歯肉幅(㎜) | 1.3±1.9 | 1.2±2.0 | 1.5±1.7 |
術後患者の自覚症状
痛み | |
痛みの度合い | 0.8±0.8 |
無痛だった | 6(14.0%) |
そこまで痛くなかった | 32(74.4%) |
少し痛かった | 3(7.0%) |
とても痛かった | 2(4.6%) |
痛みが持続した期間(日数) | 2.6±1.5 |
出血 | |
出血の度合い | 0.7±0.5 |
無出血 | 14(32.6%) |
少し出血した | 29(67.4%) |
結構出血した | 0(0.0%) |
かなり出血した | 0(0.0%) |
出血した期間(日数) | 1.2±1.1 |
腫れ | |
腫れの度合い | 0.8±0.5 |
腫れなかった | 11(25.6%) |
少し腫れた | 30(69.8%) |
結構腫れた | 2(4.6%) |
かなり腫れた | 0(0.0%) |
腫れが持続した期間(日数) | 2.0±1.8 |
※ 左の数値は人数、()内は割合を示す。
と、まあ結果を見てみるとミラーの分類クラス1〜2にはとても効果のある方法のようだね。
ただこの方法が特別成功率が高そうというわけでもなさそうだよ!
やっぱり傷口が小さい分、術後の不快症状は少ないみたいだね!
どうかな?みんなも興味があったら練習してみるといいんじゃないかな?
まずはオルバンナイフを加工したような外科キットが必要だけどね。