神経の治療とは何ですか?
とても重要で難しい治療にも関わらず、患者さんからすると何をやっているかさっぱり想像がつかない神経の治療。今回はその疑問にお答えします!
歯の神経とは何ですか?
実は我々が患者さんにわかり易く説明するために歯の神経と呼んでいる組織は実際には豊富な血管や細胞、神経の塊の事を指しています。
何のために歯に血管があるんですか?
歯は毎日2000回以上もの噛む力が加わるとても過酷な臓器です。その衝撃を受け止めるために枯れ木の様な乾いた状態よりも、若木の様なみずみずしさが必要になってきます。歯の血管はそうしたみずみずしさを歯に供給するためにとても大事なものなのです。
歯の神経はどんな形をしていますか?
下の写真をご覧下さい。これはある高名な先生が歯の神経が入っている管に墨汁を流し込んだ写真です。
まるでアリの巣の様な、または木の根のような構造が見てとれると思います。さらに墨汁の粒子は入れないが細菌は入り込める“ 象牙細管 ”と呼ばれる管がある事が解っていて、その総全長は2キロメートル以上あるとされています。神経の治療とはこの迷路の様な管(根管)を徹底的にきれいにする事なのです。
歯の神経の治療の歴史
歯の神経の治療はここ100年で急激に発達してきました。
現在でも発展途上国や医療機器が十分発達していない国、医療水準が低い国では必要な歯の神経の治療を行う事が出来ず、歯そのものを抜く事が治療となっている国も少なくありません。
日本でも江戸時代は歯を切削する機械などもちろんありませんでしたから、歯の治療といったら抜く事があたりまえの時代でした。
現在では歯を切削する機械の性能や治療技術が向上してきており以前に比べると治療の成績は良くなっていますが、それでも自然が作り出した複雑な構造をした歯の神経を完璧に治療するのはとても困難であり、まだまだ課題が残る治療でもあります。
どんな時に神経の治療が必要ですか?
下の図は虫歯が神経にまで達してしまっている状態を示しています。
虫歯を発生させる細菌は硬い歯を貫通するには長い年月を要しますが、柔らかい神経(歯髄)に達っすると一気に根の先まで進み、痛みを伴う膿の袋を根の先端に形成してしまいます。この時の痛みとは心臓の鼓動に合わせてズキンズキンとするような痛みが多いようです。 ではこの状態を放置するとどうなってしまうのでしょうか?
信じられない事かもしれませんが、重症化した場合、細菌は歯のうわっている骨の髄(骨髄)にまで達しそこから全身を巡ることにより死に至るケースもあります。実際、日本と同等の医療先進国であるアメリカでも2011年にこの病気が原因で24歳の青年が死亡しています。
以上の事から虫歯が神経にまで達してしまった時は感染してしまっている歯髄を物理的に取り除き、再び細菌が侵入したり増殖したりしないようにしなければならないのです。これが神経の治療です。
どんな器具でどうやって治すんですか?
神経の治療はとてもシンプルで原始的な方法です。基本的に汚れた部分を直接こする事により感染源を取り除くと言う事を繰り返すのが神経の治療です。
ファイリング
ファイルを使用して根管の中をきれいにしていきます。根
管の形はとても複雑で3次元的に曲がりくねっているため
きれいにするにはとても時間がかかり、これが神経の治療
を長引かせる原因となっています。
根管充填
神経の治療の最終段階です。
きれいになった根管にガッタパーチャを隙間無く詰め、神経の治療は終了です。この後にやっと歯をかぶせる処置に移る事が出来ます。
神経の治療がいかに大変か解って頂けましたか?
大事な事は神経まで虫歯が達してしまう前にきちんと治療しておく事、そして定期的な検診を怠らない事です。
また症例によっては神経を取らずに残す事が出来る治療方法もありますから主治医にしっかり相談してください。